遣らずの雨は降らなかった その日、任務から帰ってきた晶が自室に戻らず談話室にいたのは、誰かと過ごすことで落ち着かない気持ちを紛らわせるためだった。偶然居合わせたルチルとラスティカ、そしてカナリアとともに紅茶を味わいながら、魔法舎にいない魔法使い達の無事を心の中で祈る。心ここにあらずといった様子なのは弟の帰りを待つルチルも同じようで、同じ気持ちの人がそばにいるだけでいくらか気分が和らいだ。
晶が待っているのは、自分が行ってきた任務先とは別の場所に出かけている魔法使いたちである。
今朝方、東の国の辺境にあるとある村から依頼があった。村が呪いに侵されている、という急を要する依頼だったため予定が空いていた魔法使いたちが急遽その村に向かうことになった。ネロにリケ、クロエ、シャイロック、スノウ、ミチル、そしてフィガロという国の壁を超えたメンバー構成である。
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