モモがヴァンパイアになって百年が経った。
百年と言うと、おおよそ人ひとりの一生ではあるが、悠久の時を生きる僕たちからするとあっという間であった。
短い人生しか知らない人間に、僕たちの時の流れを説明するのは大変難しい。大衆の諍いを見つめる千年は退屈で欠伸が止まらなく、月夜の下で愛する子と共に手を取り歩む百年はあっという間であるとだけ話しておく。
あの日、モモに酷い目を合わせた村人たちは、寿命でとうの昔に死んでしまった、という事にしている。本当はモモが知らない内に僕が村ごと焼き払ったのだが、真実なんて知らなくていいのだと伝える事は無かった。モモはきっと、無碍に扱われた人間相手にも心を痛めるであろう。あの子の悲しむ顔は、もう見たくなかったからだ。
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