指輪の話「なぁ、大悟。お前は結婚とか興味あんの?」
久々にオフが被った日。2人とも休みが久々だったこともあり、同棲している部屋でゆったりと過ごしていると流司くんからそんなことを聞かれた。
「興味は、ないことは無いですけど。俺は流司くんと一緒に居られるならそれでいいです。」
手元のスマホから目を離し、振り向いてそう答える。流司くんはソファに寝転び雑誌を見たままだった。
付き合い始めて三年。普通のカップルなら結婚を考える頃合なのかもしれないが、俺たちはそれが出来ない。
そもそも流司くんとこうして付き合えていることでさえ、今でも夢物語のようなことでそれ以上を望むだなんてバチが当たりそうだ。
「嫌では、ないんだな?」
流司くんは雑誌を置き、起き上がると、こちらを覗き込んでそう聞いてきた。
「そ、それはもちろん。当たり前です!」
寄りかかっていたソファから身を離し、咄嗟に膝を正してしまう。
「じゃ、するか。結婚。」
「え」
思わず、手に持っていたスマホを落とした。
スマホは鈍い衝突音をたて、フローリングに転がる。
「……届けは出せねぇけどさ、次のオフ指輪買いに行こうぜ。」
流司くんは優しい手つきで手を絡めてくる。そして、恋人のように手をつなぐと、「左手の薬指につけるための指輪、二人でお揃いのやつ買いに行こう。」と優しく笑った。
「……はい……!」
手を握り返し、そう返事をする。
こんなに幸せな瞬間があっていいのだろうか。
いつの間にか涙が滴り落ち、着ていたTシャツが濡れていた。
「泣くなよ、大悟。そんなに嫌か?」
「な訳ないじゃないですか!嬉し涙ですあー止まんね……。」
拭っても拭っても涙は止まりそうにない。流司くんは呆れたような顔をしながらもティッシュを取ってくれた。
止まらなかった涙が落ち着いた頃、再び流司くんの目を見て口を開いた。
「俺からも、今度プロポーズさせて下さい。」
「うん、楽しみにしてる。」