椿の咲く頃に 序「ん?客か?」
格子越しに、照明に照らされ、きらきらと輝く金色の髪。華やかな模様が描かれた赤の着物。
こちらに向けられた青みを帯びた灰色の瞳は長く伸ばされた前髪の隙間からでも分かるほど力強い目をしていた。
座ったまま煙管を吸う彼は人を寄せ付けない美しさをしている。
「男のオレを買いに来るなんて物好きなやつだな。」と彼は煙を吐きながら笑った。
「買う?貴方を?」
聞きなれない文章に思わずオウム返しのように聞き返してしまう。
「わざわざここに来たんだ。そういう目的以外に何がある。」
「あ、えっと、俺知り合いに連れてこられて……ここはどういうところなんですか。」
しどろもどろになりながらも答えると、彼は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。その顔つきは先程よりも少しだけ幼く見えて可愛らしい。
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