記憶 渋滞を見越して早めに家を出発したものの、撮影の集合時間よりかなり早く到着してしまった。車の中で時間を潰すにも時間がありすぎる。暇を持て余しそうだ。
外で時間を潰すか、と仕方なく近くにあったカフェに入ることにした。
チェーン店ではなさそうなそのカフェは入口からいいコーヒーの香りが漂っている。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
メニューを見ながら店員の問いかけに「ブレンドコーヒーで。」と返す。
「かしこまりました。ご一緒に軽食はいかがですか?」
生憎だが、朝食は食べてきてしまった。「大丈夫です。」と顔を上げたその時、随分と見慣れた顔がそこにあった。
「か、とう。」
そう書かれた名札を思わず読みあげてしまう。
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