襲撃「……麻真?」
稽古終わり、劇場の廊下を歩いていると遠くに歩いている麻真の姿を見つけた。麻真は先に稽古が終わったこともあり、既に帰ったはずだ。何か忘れ物でもしたのだろうか。
特に声をかけることも無く、廊下を歩いていく。その時、ある違和感に気がついた。麻真の足取りがいつもより遅い上、千鳥足で今にも倒れそうな歩き方だ。もう少し歩けば追いつくだろう。
ふと地面に目を向けると、麻真が歩いた道に赤い斑点のような模様が着いていた。
「何これ、血のり……?」
嫌な予感がし、走って麻真に追いつく。後ろから「おい、麻真。」と肩を叩くとその勢いのまま、前に麻真が倒れていった。
咄嗟に腕を掴み、麻真の体を抱きとめる。なんとか地面と衝突することは防がれた。間一髪のところだった。
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