苺タルトある日の晩、まみちゃんがテレビでカフェ特集が放送されている番組を見ながら 『数量限定の苺タルトかぁ…。食べてみたいなぁ…。』とボソッと小声で言ったのが聞こえ、店舗名を覚えた相澤はすぐにマイクに “この店舗名の場所を教えろ” と連絡する。「ココは○○の近くのカフェだな〜。なに?なかちゃんとデート?」とすぐに返信が来るが既読スルー。地図アプリで○○を探し 近くにあった目的の店舗の電話番号をメモし、翌日の朝イチすぐに店舗に予約を入れる相澤。
土曜日に「明日、一緒に行きたいところがあるんだが…」とまみちゃんを誘う。
「(消太くんから誘ってくれるの珍しいな)」と思いながらも嬉しいので笑顔で「行く!!」と返答。
次の日、いつもより少しだけオシャレをして 相澤の運転で目的地へ向かう。相澤も髪をハーフアップにしたりして いつもより容姿を綺麗にしていた。「(どこへ行くんだろうな〜)」と窓の外を見ていると「(そういや、この前テレビで見たカフェ、ここら辺やったなぁ…)」と思っていると、そのカフェの駐車場に車を停め始めた相澤。
「(え……?)」と運転している相澤を見たまみちゃん。車のエンジンを切り、シートベルトを外した相澤は 「…ほら、行くぞ」と くつくつ笑いながら サプライズが成功し、嬉しそうな顔をしながら外へ出る。急いでシートベルトを外し、鞄を持って外に出たまみちゃん。
「消太くん何で…ここ…」
「この前テレビ見ながら食べたいって言ってただろ」
「聞こえてたの!?」
「まァな。…すみません、予約していた相澤です」
店内に入り、店員に名前を告げると 奥の方の席へ案内された。テレビの効果もあるのか店内は賑わっていた。
「え、予約もしててくれたん…?」
「テレビで放送されたら客も増える可能性があるからな。…念の為だよ」
「ひぇ〜…、スパダリ〜…。ありがとう…」
向かい合わせで席に座ると テーブルの上に“Reserved seat”と書かれたプレートが置いてあり 店員がそれを回収し戻って行った。相澤のまさかの行動に 嬉しすぎてニヤける顔を隠すように顔に手を当てお礼を言う。
「ん。…苺タルト、食べるんだろ?」
「食べる!!消太くんは?」
「俺は、珈琲だけで良いよ」
「…いいの?ティラミスとかもあるみたいやよ?」
「いいよ。まみは飲み物どうする?」
「んー…、今日はアイスティーにする」
「分かった。…すみません」
そんなまみちゃんを優しく見つめながら、ドリンクの希望を聞く。決まった所で 相澤は まみちゃんの希望する苺タルトとアイスティー、自分のホットコーヒーを店員に注文する。注文を聞いた店員は厨房の方へ歩いていった。
「…まさか 消太くんが あたしがボソッと呟いた事を聞いていて、カフェの予約をしてくれていて、しかも一緒に来てくれるなんて…」
「嫌だったか?」
「っまさか!!めちゃくちゃ嬉しい!!でもこういう雰囲気のお店、苦手やと思ってたし、女性ばっかりやし…」
「1人なら来ようとは思わないが、まみが食べたいって言うなら 何処へでも行くよ。それに俺たちみたいにテレビを見て来たであろう恋人達もそこそこ居るしな」
まみちゃんは 周りをちらっと見回すと、確かに周りには数組のカップルが座っていた。
「ほんまや…。」
すると “お待たせしました” と店員が 苺タルトとアイスティー、ホットコーヒーを持って2人の席へ。テーブルの上に置くと “ごゆっくりどうぞ” と言い戻って行った。
オシャレな真っ白なお皿の上には 6分の1にカットされた苺タルトが。赤く綺麗な色の苺がカスタードクリームの上にたくさん乗って ツヤツヤと輝いている。
「〜〜っ!✨」目をキラキラさせながら 苺タルトを見るまみちゃん。そんなまみちゃんに 「写真、撮らなくていいのか?」と伝える相澤。
「っ撮る!!」とスマホを取りだし 色んな角度から写真をカシャッと撮る まみちゃん。そんな様子をこっそり写真に撮る相澤。
「いただきます!」と手を合わせ フォークを手に取りタルトに優しく切り込みを入れ、なるべく音を立てないように注意しながら切る。そして口に運ぶ。
「ん〜〜!!!✨」
口の中に広がる苺の甘みと酸味がカスタードクリームとの相性抜群で あまりの美味しさにまみちゃんは口に手を当ててしまう。
「うまいか?」
「…さいっこぉ…。やばい…」
「ふっ、そりゃよかった」
語彙力が無くなったまみちゃんを 相澤は優しく見つめながら珈琲を飲む。
「…はい、消太くん」
まみちゃんは フォークにタルト生地、カスタードクリーム、苺を乗せ 相澤の口元に持っていき、俗に言う あーん の体勢をとっていた。
「いいのか?」
「うん!美味しいものは共有したいもん!…消太くんからしたら、甘いかもしれへんけど…」
ニコニコしながら言う まみちゃんに 相澤も嬉しくなり、口を開け食べる。
「ん。うまいな」
「でしょ!? …食べれて良かったぁ」
幸せな顔をしながら また食べ始めたまみちゃんに 相澤は微笑む事しか出来なかった。
─── 食べながら、飲みながら、沢山の話をした2人。
「ごちそうさまでした。ん〜!美味しかった〜!」
食べる前と同じように 手を合わせたまみちゃん。
「ん。良かったな」
まみちゃんが食べ終わる少し前に珈琲を飲み終わり、スマホでニュースを見ていた相澤。
「本当にありがとうねぇ」
「どういたしまして」
「大好きな消太くんと、大好きな苺タルト食べて、今日も幸せだ〜!」
ふにゃっとした顔で笑い相澤を見つめるまみちゃん。
「俺も、まみとデート出来て幸せだよ」
そんなまみちゃんを見つめながら 優しく微笑んだ相澤。
「っ…」
相澤の微笑んだ顔を見たまみちゃんは恥ずかしくなり顔が真っ赤になる。
「じゃぁ、そろそろ行くか」
「う、うんっ」
相澤が 伝票を手に取り立ち上がると まみちゃんもいそいそと荷物を持ち立ち上がろうとする。
「慌てなくていい。会計終わったら入口付近で待ってるからトイレも行っておいで」
「ん、分かった。ありがとう」
相澤は まみちゃんにそう言うと レジに向かった。
「……あたしの彼氏 かっこよすぎやろ…」
ボソッと呟き スムーズな行動に惚れ直しつつも、待たせる訳には行かないと、急いで化粧室へ向かった。
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