想いは手帖から第三章
手帖
「お父様の顔、今でも覚えてる。ずっと泣いてたわ…。親孝行も出来ずに死んじゃった」とチヨはポロポロと今度は涙を流した。
赤瀬はチヨの涙を拭うように、どこからかハンカチを取りだしチヨの涙を拭った。
「あ…ありがとう…」と彼女は答え、なんとか涙をこらえるように、えづきながらそれでも息を整えた。
赤瀬は「辛かったね」と話した。
どこからか、冷たい風が吹いてきた。
なんとか涙は枯れて、チヨは泣き止んだ。静かなホームが赤瀬とチヨを包み込む。
しばらくして赤瀬は、考え込んだ。頭の混乱を何とか落ち着かせつつ、彼はとにかく考えた。
海どころじゃなくなった。
…………彼は今はもう、手元のノートのことで頭がいっぱいだった。
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