お誘い時計が空の月を差す頃。
私は握りこぶしで、「うん、出来る」「大丈夫!」と、自分を鼓舞していた。
恥ずかしい。とてもじゃないが正気でなんて居られない。けど、やるしかない。そう決めたから。
なんとか震える足で立ち上がり、別室でのんびりしている彼の隣に、おずおずと座る。
「あ、あのさ、高杉くん」
「なんだい。畏まって、今更苗字呼びなんて」
契りを交わしたあの日から、私は彼を「春くん」と呼ぶ様にしてたから、緊張で思わず苗字で呼んでしまった事を、軽く反省した。
「ごめんね、春くん」
「別に怒っては無いがな。…で、何?」
「あ…………の………わ、私と」
緊張で声が震える。噛み噛みなのも丸分かり。でも、今日、頑張るって決めたから、彼の指先に、指を絡めながら、少しづつ口を開く。
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