修羅の男それを聞いた時、オレの中で大事な、大切な何かが音を立てて壊れていくのが分かった。
そんな言葉一つで簡単に手放せる程、お前の中でオレは軽いのか。
────そうか。
腸が煮えくり返るのを綺麗に隠して水木は了承した。それに男はホッとした様に、けれど訝し気な顔をしていたが、水木は心の内を見せなかった。
あの日、お前が手放した。オレに干渉する権利をオレの未来に、決定に、口出す権利をお前が永久に手放したんだ。
オレの心をお前が要らないと拒否したんだ。ならばせめてオレだけでも大事にしてやらなきゃ、可哀想だろう。けれど独りで生きるには、不要な感情だった。だから閉じ込めた。奥底にしまい込んで蓋をした。
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