春の前冬の寒さが終わり、春の暖かさが広がる昼の街は、休日ともあって観光客でにぎわっていた。
人ごみから逃れるように季肋たちが選んだ休息の地は、HAMAツアーズの寮からほど近い海の見える公園だ。
そこまで行くのに、多少時間はかかるが春の景色を観察するのも一つの楽しみとし、足を進める。
「季肋、みてみて絨毯て来てるゥ! ひゅー飛び込んじまうか!」
前を歩いていたあく太の声に、季肋は視線を前に向ける。
住宅の一つから伸びた枝には濃いピンク色の花が付き、そのすぐ下には散った花びらが、こぼした絵の具のように地面に伏していた。
「汚れる、から、だめ」
「堅実……! 汚したら潮先生激怒……!」
渋い顔であく太は桜の絨毯前で、ぐ、と拳を握る。
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