片想いなら他人に迷惑かけていい〈グレゴール〉
ハートでもつきそうなほど愛嬌たっぷりに呼び止められる。それだけでグレゴールは全てを察してくれたようだった。
「またかい、管理人の旦那」
頭をかいて力無く笑った彼にほんのちょっとの罪悪感を感じつつ、彼に語り明かす夜の始まりを思い出す。
前略、ダンテは恋をしてしまいました。この一文だけならまだ希望も夢も山ほどあった。二言目が「“あの”赤い視線に」でなければ。
これが恋だと気づいた時、頭を抱えた。自分の趣味の悪さに。だってそうだろう。囚人達の見目は麗しい。かっこいいのからかわいいのまでいる。それを差し置いて?あれを?同じバス内に同じくらい顔が良くて自分に興味と関心と優しさがある相手がいるのに?そこ?といった具合だ。
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