過日の君に祝福を 物心ついた時から病院通いが日常だった。それが入院という形に変化するまでにそう時間はかからなくて、記憶している幼少期の思い出はそのほとんどが白を基調としたどこか無機質な景色の中にあった。
はじめて長期入院が決まった日の夕暮れだった。様々な身体の検査に丸一日時間を奪われたオレは疲れ切っていて、夜が訪れるのも待たずに力なくベッドに横たわっていた。細波のように寄せては返す意識の中、ぼんやりとした夢うつつで聞いたのは「上手に産んであげられなくてごめんね」と啜り泣く母さんの声。オレはその涙を拭ってあげたくて必死に身体を起こそうとするのに、気持ちとは裏腹に指一本ひとつ動かせなくて、もがけばもがくほど意識は遠のいていく。
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