破竹 竹林に囲まれた一つの山が葛葉の世界すべてだった。
この世界の理不尽の中に、葛葉は一人で生きていた。
父も母も、国の荒廃のせいで、命を落とし、姉や幼馴染とは離れ離れになった。
ひとりぼっちになってしまった葛葉ができることは、ただひっそりと山奥で暮らすことだけだった。
竹を取って、それらを焼き、炭にして売る。あるいは竹を加工して、食器や籠やら生活必需品に作り変える。それを街に売りに行っては、細々とした金銭を得た。
それが葛葉に残された生きる術だった。
だが、それだけの日々も常に危険と隣合わせだった。なぜなら荒廃した国には、【妖魔】と呼ばれる化物が出るからだ。
南の国には久しく王がいない。
国に王がいなければ、その国土が荒れ、人や家畜を襲う妖魔が出る。
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