浴衣に纏わる掌編 仙台七夕祭りは、仙台藩祖・伊達政宗の時代から数百年続く東北三大祭りの一つである。
旧暦の七月七日、新暦では八月の初め。街の至るところに趣向を凝らした七夕飾りが溢れ、夜空の星を映すように揺れている。
及川徹は、実家に帰っていた姉に着付けてもらった若竹色の浴衣を満足そうに眺めながら、青城バレー部員たちとの待ち合わせ場所であるアーケード街の入口に立っていた。
今日はちょうど部活のオフ日。最終学年ということもあり、思い出作りに皆で行くのも悪くない、と計画していたのだ。
地元から一緒に来た岩泉は、知り合いらしき町内の青年団員から力仕事を頼まれ、今ここには居ない。
「はりきって、ちょっと早く来すぎちゃったかな。」
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