海の瞳、記憶の水底忘れられない顔がある。
記憶の中に広がる景色がある。
ずっと残る傷痕みたいに、良いことも悪いことも深く脳髄に刻み込まれて蓄積していく。
頭の中を埋め尽くす膨大な記憶たちに埋もれていると、ある瞬間には途方もない虚しさの中に身体を放り出されたみたいな気がして、それはそれは寂しい心地がしたものだ。
教えられたことや見たものは全て全て覚えていた。
初めこそ、周りのみんなはそんな僕を神童だ、天才だと褒めそやした。
けれど時間が経つにつれ、どこか気味の悪い目で僕を見るようになった。
たぶん、本当は知られてはいけなかったんだろう。
なにも、口にしてはいけなかったのだろう。
――リセットしよう。プツンと繋がっていた糸を切るみたいにして、記憶の箱を海の底に沈めたのはいつだったか。なぜなの、だったか。
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