「小夜! こんなとこに突っ立って何してんだ?」
「あ、太鼓鐘さん」
本丸に構える畑の隅で、見慣れた内番着の後ろ姿に思わず声をかけた太鼓鐘貞宗であった。
熟れたトマトでいっぱいの籠を抱えていた小夜左文字は、はつらつとした声に常のような落ち着きで応える。
「おー! もう収穫できたんだな。みっちゃん達の腕が鳴るな」
「はい、そうですね」
僕も楽しみです、と僅かに表情を綻ばせながら呟いた小夜の様子に、太鼓鐘はうんうんと大きく頷いた。
「で、何してたんだよ」
「あぁ、あれです。ほら――」
控えめな動きで前方を指差した小夜に釣られ、太鼓鐘も自然と顔が前を向いた。
その先、視界に映ったのはまたも見慣れた後ろ姿であった。しかし、今度は二人いる。
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