冷えた空気のなかで、さらに冷たい風が肩に触れて指先がひんやりとした。すぐ横で転がっていた小さなリモコンを手繰りよせて、表示される気温をシンラはぼんやりと読む。
「設定温度20って寒くね?」
「上げてもいいが、じきに良くなるぞ」
アーサーの髪を頬に感じながらも視線は向けないまま、「んー」とあいまいな声だけを返して、そのリモコンを宙に掲げる。短い機械的な音が5回、部屋の隅から聞こえた。
カチャン、と手元から落としたリモコンは床を滑って、山になった二人分の衣服に埋もれた。室内に容赦なく注ぎこむ昼間の光が、カーテン越しでも瞼を照らす。
視界だけを閉ざして、ほんの少しだけひんやりとする薄いシーツを肌にまとう。それをはがすようにアーサーの指が、首から肩、胸から腰の輪郭をさらりと撫でていった。長く吐いた息はアーサーの柔らかさを誘う。軽くキスを交え、伸ばした腕でゆるく揺れる背中にしがみつく。
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