君はかつての愛の形なんだ。
実家から最寄り駅までの道を自転車で駆け抜けて、たどり着くのは大学の試験研究室。コミニュケーション人型ロボットを作る稀代の開発者たちに憧れて、やっと掴んだこの四畳半だけが、俺にとって何にもかえがたい世界だった。
「起動テスト開始。」
俺がPCの遠隔操作で電源を入れると、小さな機械の排気音と共に部屋の片隅の一体のヒューマノイドが目を覚ました。ディスプレイの瞳にピンク色が灯り、彼女は告げる。
「こんにちは。」
「こんにちは、デリシア。」
俺の声を認識できた彼女は忠実に微笑んだ。
「アイデンシャルの倉橋博士ですか。」
「………何でしょうか。」
「突然お声がけして大変恐縮でございます。私こういうものでして。」
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