お嬢様と従者 あるところに、引退したばかりの暗殺者がおりました。これを機に穏やかな生活を送ろうと夢見ていましたが、どこからともなく敵が現れ、命を狙われてばかりの日々を過ごすことになります。夢見るどころかおちおち寝てもいられない状況に追い込まれてしまいました。眠気で重くなった目蓋をなんとか持ち上げて、あてもなく逃げ惑うことになったのです。そんなある日、逃げ道の途中、暗殺者は疲れで霞んだ視界をはっきりさせようと、何度も目を擦りました。それもそのはず、道の真ん中で怪物を見つけたのです。しかも、その怪物はうつ伏せになって倒れていました。一大事です。暗殺者は一瞬ぎょっとしましたが、恐る恐る声をかけました。
「一体どうしたんだい」
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