①鵜野澪&東惣太郎 邂逅編 「この辺りかな?深夜に子どもが徘徊してるって……何日間も何してるんだろう」
まばらに立つ街頭の列に沿い、東は歩を進める。
愛知県某所、時刻は午前四時。
夕方まで町を包んでいた初夏の香りはどこへやら。閑静な住宅街には、重くひんやりとした空気が立ち込めていた。深夜……ともすれば日も出ぬ早朝である。この時間帯に出歩く習慣のない彼にとって、この雰囲気は決して心地の良いものとは言えなかった。
それでも児童相談所の職員として、全うせねばならない仕事がある。暗がりに目を凝らしながら進んでいると、東は一つの影を見つけた。
東惣太郎 : 「……あれ、かな」
東はその影にそろりと近づいた。上背は150cm前後。中学生か、はたまた小学生か。いずれにせよ怯えさせないよう努めなければならない。東はできる限りにこやかに、目の前の少年に話しかけた。
2018