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    しきしま

    @ookimeokayu

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    しきしま

    DONE浅見×大河東京の桜がいちばんの見頃を迎える頃、浅見から予約が入った。
    大河は、浅見の予約がない限りは別の男に抱かれることもなく、今まで通りの日々を送っていた。浅見が自分を囲っていて、他の男には渡さないようにしているのか、単純にそういった人間は少ないというだけなのか、それともまた他に理由があるのか、考えても大河にはよく分からなかった。別の板前に聞くのも躊躇われた。このことで色々と教えてくれたジローにさえ尋ねるのは恥ずかしいし、コウキやスバルにはなおさら言い難い。ましてや、尾上には口が裂けても言えなかった。浅見に執着し始めている自分を、誰にも知られたくなかったのだ。

     予約の日は、思っていたよりも早く訪れた。
     いつもの通り、運ばれていく料理を見つめながら桜の間で待っていると、予約していた18時ちょうどに、濃藍の着物に身を包んだ浅見が入ってきた。
     心の準備はできていたはずなのに、浅見の顔を見ると大河は期待と戸惑いでどうにもならなくなってしまった。浅見のほうは、割と飄々としていた。それが何となく、大河には気恥ずかしかった。かといって、戸惑っていて欲しいわけでもない。

    「会いたかったよ、可愛い僕の 3171

    しきしま

    DONE藤征一×鞍上卓弥こんなときに限って木曜日だった。
     スペアキーを使って入った藤さんの家で、勝手に作ったホットミルクを飲みながら、スマホアプリのラジオで耳慣れたパーソナリティの声を聴いていると切なかった。
    木曜日のパーソナリティは藤征一。ラジオは生放送で、終わるのは深夜2時。
    藤さんが帰ってくる頃には、おれはぐっすりと眠っているだろう。ラジオだって、最後まで聴けるかわからない。おれはだいぶ眠気に弱いほうだ。
    ラジオの向こう側の藤さんは、今週から始まったドラマの撮影の裏話に夢中だった。ドラマは学園ミステリーで、藤さんは教師役。主役である高校生を務めるのは、小山内奏佑という新人俳優だ。歳は俺より一つ上の二十歳。綺麗な顔立ちで、真面目で礼儀正しく、演技力の評価も高い。今最も注目を集めている俳優といっても過言ではない。そして藤さんは、そんな小山内奏佑にお熱のようなのだ。

    「奏佑くん、ほんとう、もう、すっごい可愛い。藤さん藤さーんってペタペタついてくるのがペンギンの赤ちゃんみたいで……、伝わる?これ、伝わるかなあ」

     スタジオからは苦笑いが聞こえる。SNSを覗くと、小山内さんのファンらしき人たちの喜びや感謝の 3332

    しきしま

    DONE佐藤さん×朝陽(※養子縁組)殺風景だった佐藤さんの部屋に、少しずつ俺のものが増えてきた。置いてある歯ブラシは常に二本になり、枕元に灰皿も置かれた。読んだまま戻し忘れた漫画で、本棚は歯医者の待合室みたいになった。そんなふうにして、俺の帰る家は六本木になった。
     まだ一年目の新人が六本木に引っ越すのを上司は少し訝しがったが、家族がそこに住んでいるのだと言うと、納得したようだった。
     それももうすぐ、嘘ではなくなるはずだ。

    「ほんとうにいいのかな、朝陽」

     カーテンの隙間から覗く月を見つめながら、佐藤さんは呟くように言った。その言葉は、もううんざりするほど聞いていた。心の中をそのまま映し出すように、手に持ったワイングラスの中の赤が揺れている。
    佐藤さんの気持ちも分かる。
    だからこそ、なおさら俺はうんざりしていた。

    「俺はそうしたいよ。佐藤さんは違うの?」
    「僕もそう思うよ、でも……」

     佐藤さんは、困ったような顔で俺を見た。

    「朝陽の人生を縛るのはイヤなんだ」

     俺は、人生を縛られたつもりはなかった。自分の意志でこの部屋にいて、自分の意志で、佐藤さんの養子になろうとしているのだ。
     ただ、佐藤さんと家族にな 3219