この世界では、とある夫婦によってそれが当たり前だと過ごして生きてきた人間達の価値観ががらりと変わった。
人間と魔法使いが存在するこの世界において、長い歴史の中で両者の間には深い溝が生まれていた。今となっては何が恐怖で何が嫌悪で、何がきっかけだったのか。そのくらい長い年月をかけて出来たそれは、一人の異世界の少女と一人の魔法使いの話によって変わっていった。
異世界から来た賢者と呼ばれる存在と、その賢者の魔法使い達。定期的に迫りくる<大いなる厄災>に対抗しうる唯一の存在。そんな存在が居る。ただの一般人からすると、それだけの漠然とした認識しかなかった。
その世界に生きる全ての人を命がけで守っているなんて事もきっと知らない。魔法使いは自分達人間と違って強い生き物だから、厄災との戦いだって簡単だろう。上手くいかなかった時は魔法使い達が手を抜いたと思っていた。
5146