アンバランス、ベストポジション 食事を終えて店を後にし、ドライブをしながら彼女と帰路を行く――その最中、吉羅は彼女の様子が普段と違うことに気が付いた。
「今日の食事は口に合わなかったかね? 君はイタリアンが嫌いではなかったように記憶していたが」
「えっ……そ、そんなことないです! すごく、美味しかったです」
続けて、笑顔で感謝の言葉を述べる。その笑顔がどこか無理をしているように見えて、吉羅は路肩に車を停めた。
「その割には浮かない表情をしている。私に何か不満があったなら言ってくれ。改善するよう善処しよう」
そう言うと、香穂子は違う、と言いたげに首を横に振った。
「そうじゃないんです、不満があるわけじゃなくて……私が、暁彦さんの隣にいることが、不釣合いなんじゃないかって」
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