ALL あんスタ 燐ニキ 萩乃**はぎのDONE※燐ニキ※『夜間逃避行』夜行バスのなか隣から寝息が聞こえてくる。いや、伝わってくる。走行中のバスの振動に負けず、すうすうという規則正しい音とともに。「おい。おいニキ」「う~……すやすや」「寄りかかンな。重い」「すー……」窓際の席に座りながら、ニキは燐音の肩に頭を乗せて眠っている。寝言で「おなかすいた」と言った気がする。夢の中でまで腹空かしてンのかよ。ちょっと気の毒になって顔に目をやると、半開きの口から涎が垂れている。「……だらしねェなァ」指で拭ってやると、むむ、となにか唸る。起こしてしまったかとやや心配するが、また規則正しい寝息が聞こえてくるばかり。指に纏った粘液をしばし見つめ、ニキの上着で拭き取った。こんなことなら、俺が窓際の席をとっておくんだった。景色もなんも見えやしねェ。とはいえもう深夜2時。ニキが眠るのも道理、景色は闇夜に塗りつぶされていていずれにせよ見えない。少し、星が輝いている。故郷へ近づくにつれて、見える星の数が多くなってきた気がする。バスが山道に車輪をとられて跳ねた。「はっ!!」途端ニキが飛び起きて、口元を拭った。「あれ? ここどこ……燐音く 2599 1