物理的に距離を取る弟 思い出してしまった。ビリビリと紙が破ける音と共に、風に舞ってその敗れた破片が何処かへ飛ぶところを、まるで自分の事でないかのように見たまま、思い出してしまった。
「こんなことより勉強しろ」
思い出したら不思議と言われた意味を理解出来た。こんなこと。なるほど。兄貴にとってこれは「こんなこと」なのだと。
ぐらりと視界が反転する。だが倒れるほどではない。浅くなる呼吸を何度か繰り返した。
こちらに向かってくる友人。取り押さえられる兄。ただ茫然と、呆気にとられる体育館。兄貴の怒鳴り声だけが響いていた。
思い出したのだ。思い出してしまった。だから今度は傍にいてはいけない。
体育館から出てすぐに理事長室に向かい退学届を出した。優しい顔をした理事長がただ困ったように俺に話しかける。
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