交わる世界 もはや執念と言ってもいいだろう――ある時山で出会った人間はどうしようもなく私に魅入られてしまった。
否、正確には“人外という生物”に彼女は惹かれたのだろう。出会って以来何度追い返してもやって来る彼女を追い返すことも面倒になってきてしまった。目を輝かせて私を観察する彼女の視線にも慣れてしまった。
「ねえ、今日こそ身体を触らせてよ」
「あまりふざけたことを抜かすと本当に山奥に置いていきますよ」
「大丈夫だよ、私山の中歩くの得意だからさ」
この人間なら確かに大丈夫そうではあった。溜息を吐くことしかできない私を彼女は笑った。
「体の構造や雰囲気は私とは違う生き物なんだとは思うけどさ、それでも君は随分人間臭くて好きだな」
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