抱きしめた彼女は震えていた。声を押し殺しながらポロポロと泣く姿があまりにも痛々しい。何故彼女がこんな思いをしなければならないのか?彼女はこれまでたくさん辛い思いをしてきたのだ。だから俺は彼女に幸せな思いで毎日を過ごせるよう大事に大事にしてきたのだ。
彼女にありったけの愛を彼女の心全てに染み渡るように毎日毎日伝え続けてきた。俺と想いが通じ合ってからもずっとずっと伝え続けて、そしてようやく彼女は少しずつ満たされていっていたはずなのだ。俺の愛にゆっくり応えてくれるようになった彼女の姿に俺がどれだけ嬉しかったか、俺以外にはわからないだろう?
それだと言うのに、今胸の中に居る彼女はあろうことかまた「私なんか」という言葉を使った。この言葉は使ってほしくないのに。その為に俺は彼女に俺には貴様が特別だと伝えていたのに。
965