紅葉色の糸物心ついた時から赤い糸が見えていた。
お化けみたいな怖い物も、自分の指からのびる赤い糸も、みんな見えないらしいと気が付いて、自分だけに見えてしまう存在に本気で悩んだ時期もあったけれど、真剣に悩み続けるというのは僕には向いていないようで、そういうものなのだと納得して生活をしてきた。
右手の小指に結ばれた赤い糸の先がどこへ向かうのかとても気になるけれど、自分の体から遠ざかるにつれて色は薄くなりやがて見えなくなってしまう。
ほどこうとしても触ることはできず、軽く引いてみても突っ張ることはない。
引っ張ったらかんたんにぷつんと切れてしまいそうな細い糸だけど、不思議と絡まりもせずいつもどこかへ向かっている。
これが俗に、運命の赤い糸と呼ばれるものなのではないかと思ったのは、中学二年生の時だった。
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