女装させたい「お前たちか」
ゆらりと、まるで生ぬるい風のように向けられた顔に表情はなく、感情を読み取ることは難しい。魈に会ったのは数か月ぶりだが、以前よりも肌の色は青く、疲れているように見えた。昔見た人形のようで不安が増す。
「どうしたんだ、魈? 何だか顔色が悪いぞ」
普段から「魈は何を考えているか分からない」と言っているパイモンでさえ気づいたようだ。魈はなんでもないとそっぽを向くが、やましいことがなければ顔を背けないはずだ。空が問いただそうと口を開くが、魈はいささか固い口調でそれ遮った。
「ところでお前たちは、何をしにここへ来たんだ。新しい任務か?」
「おう、女将からの依頼で望舒旅館まで行くつもりだ」
魈に女将から依頼された内容を説明した。と言っても、説明することなど大して無いのだが、魈は一つ頷いてから少し考えるように顎に手をやった。
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