高潔とParaphilia「今日は、」
ソファから立ち上がったシノが口を開く。
「今日は……?」
今度はヒースクリフが首を傾げる番だった。幸せな夫婦の真似事は、いつしか不健全で後ろめたい行為に姿を変えていた。今となっては食べさせることよりも、口の奥に触れることが行為の目的となっている。
今日はやらない。いつもそう言おうと思うのに、シノが欲しがるものを与えずにはいられない。食べさせてほしいと。滅多に望みを零さぬ小さな口が紡ぐ願いが心底愛おしい。目的を見誤ってはならないと言い聞かせる一方でシノの欲望を満たしてやることを楽しんでいた。
前に立つシノを見上げる。目が合うと、シノはいつもと変わらぬ口調で言った。
「今日は、ここで食べたい」
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