【相轟】表面張力.
1. Eighteen
「先生のことが好きなんです」
正月が明け、冬の寒さが一段と厳しくなってきた日にその生徒は言った。
相澤は内心驚嘆しながらも、表情だけは平静を装って後ろを振り返った。もちろんこのタイミングを見計らったのだろうが、静まり返った教務員室には相澤と轟しかいない。扉を閉めた密室に二人きり。だからそれが自分に向けられた言葉だというのは明白だった。
二メートルほど先にある赤と白の髪の毛が揺れて、同様にこちらを見つめてきた轟と視線が絡む。
その美しいオッドアイの瞳はあまりに真っ直ぐで。
だから相澤は、押し黙ったまましばらく口が開けなかった。
――――すき。好き。
たしかに、この青年からの好意に一切気付いていなかったかと言えば嘘になる。
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