214告白する勇気は、正直まだなかった。
けど、せっかくのバレンタインだから。
閉店間際のショコラトリーに駆け込んで手に入れた一箱。大事に抱えて帰ったら、さっき帰国したばかりの後輩が満面の笑みで待っていて。
「旭さん、チョコ食いましょう!」
バックパックから無造作に取り出されたカラフルなパッケージと、ラムの瓶。チョコレートとラム酒が土産だなんて、金曜の夜には最高の組み合わせじゃないかと感心したけれど、完全に自分のタイミングを逃した俺は、背中に箱を隠して苦笑いした。
それが、ほんの一時間前の事。
なのに一体なんなんだ。今現在の状況は?
高い体温と重みを感じる左肩に、俺の全神経が集中している。目は開いているはずなのに何も見えていない。少し鼻にかかった甘い呼吸音を拾った耳が、ピリピリと痺れる。程よく回ったアルコールのせいかもしれない。鼻息が荒くなりそうで、必死に息を止めた。
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