この身に隠して あの人は僕に触れようとしない。
粗野で、いつまで経っても僕を子ども扱いして、それなのにどこまでも優しいあの人。
僕の中に特別な想いがあると僕自身が気が付いた瞬間、それを知られてしまったかのように肩や背にさえ触れなくなった。
理由はわかっている。僕の身体は、命は、僕のものであっても決して僕だけのものではない。
死に瀕していた僕が、ウィリアム兄さんとアルバート兄様に命を救われた証である胸元に残された手術痕。そして、二人へこの身を捧げると誓った頬に刻んだ火傷の痕。
僕があの人に恋慕を抱くことは二人の兄を裏切ることになり、あの人が僕に触れることは忠誠を誓ったウィリアム兄さんを裏切ることになる。
恋など知らなくていい。知る必要は無い。
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