シンアブ人魚姫 深い海の底には人魚たちが住んでおりました。人魚たちは10歳になると地上の様子を見てもよいということになっていました。
人魚の少年、アブトはその時を心待ちにしていました。アブトはかつてから友人に聞いていた、機械や鉄道といったものに興味を惹かれ、一目見たいと思っていたのです。
アブトが10歳になった日、彼は意気揚々と地上へと上がっていきました。しかしその日の海は大荒れ、遠くには嵐に大きく揺れる船があります。
アブトはその様子を黙って見ていられる質ではありません。紫色の尾をけんめいに動かし、船の元へ泳いでいくと、その近くに今にも海の底へ沈んでいきそうな少年がいることに気付きました。アブトは手を伸ばし、彼を引き上げると浜辺まで連れて行きました。
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