伽藍鳥の伊吹 空を隠すように葉を伸ばす木々の合間を縫って、旭日がまばらにさし込む。
背の高い躑躅の葉には、朝露が乗っていて、その一粒一粒が光を吸い込み反射する。きらきら輝く小さなそれらが、やわらかな硝子のように見えるこの僅かな時間がハルミは好きだった。
何となしに手を伸ばせば、触れた指の振動で瑞々しい葉がたわみ、いくつかの滴が滑り落ちていく。美しい硝子達は重力に逆らわず次々と地面にぶつかり、表面張力が砕けて音もなく地面に吸い込まれ跡形も無くなった。
なんだか悪い事をしたような気がして、ハルミは咄嗟に背筋をしゃんと伸ばす。それから、辺りをきょろきょろ見回して誰にも見られていない事がわかるとほっと胸を撫で下ろした。
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