「とうさま!」
「静かにしなさい、麗仁」
「ごめんなさい…でも、さっきのおひめさまかわいかったです!」
劇場の舞台裏を父親に抱かれて移動する麗仁は、興奮した様子で父親に話しかけていた。
「入ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ!……あ、こら!柊!」
「やーだ!おれ外行く!」
「せめて化粧を落としなさい!」
衣装を脱いだだけの状態で楽屋から飛び出してきた柊は、扉の前に立っていた麗仁の父親にぶつかった。
「うわ!…ごめんなさい」
「あ!さっきのおひめさま!」
「え?おれ?」
ぱちぱちと目を瞬かせると、自分よりも低いところにある麗仁の顔を見下ろした。
「おひめさま、かわいかった。」
「…ありがとう。」
「ぼく、おひめさま、すき!」
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