半径二メートル [とわみら]「お、瀬文! おはよ! 朝飯だけどさ、今日は、」
「未來くん、ちかい」
「あー……うん、そうだったな! わりぃわりぃ! でも同じ部屋で暮らしてて三メートルはさすがに厳しいから簡便な!」
「……じゃあ、二メートル?」
「二メートルも難しいけどなあ。……まあ、それよりほら、食うぞ!」
「うん。おはよう、未來くん」
「おう!」
半径三メートル以内に近づかないで、と突然永久に言われてしまってから一週間ほどが経った。いきなりなんだと憤って怒鳴ったのは最初だけで、永久のまっすぐな瞳に未來は頷くほかなかった。けれどもちろん、納得出来ているわけではない。近くに寄りさえしなければ他は何も変わらないから応じているだけだ。そのうち元に戻るだろうし、なにより互いの人生を絡めるように手を伸ばし合って、今は同じ夢を見ている。それは確かだから。
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