苦くて甘い聖夜の日「ちょっと二人で話さねぇか?」
地平線に太陽が沈み、少しばかり掛けた月が辺りを照らし出す時間帯に、ディナーを終え事務所で軽く書類整理をしていたヴァンは、アーロンから声をかけられた。突然の誘いに目を瞬かせながらも特に断る理由もないので「おう」と軽く頷くと、手に持っていた書類を机の端に置き席から立ち上がる。
「どこかに出掛けるのか?」
「あー…そうしたいところだが、流石に今日はどこもごった返してそうだしな…。屋上にでも行こうぜ」
ちゃんと服着込んでけよ。というアーロンの言葉に「分かってるっつの」と返しつつ、ヴァンは夕方に外回りから帰ってきた時からソファの上背部分に掛けたままだった紺色の厚手のコートを手に取り、腕に袖を通してしっかりと前を閉じる。
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