あとすこし何度時計を確認しただろう。
刻み行く針の旋律が、チクタクと耳を責め立てる。不安と期待で胸が締め付けられ、規則的に奏でられる音に祈りを捧げることしかできない。
一番は彼が良い。
「ヴァンさん……」
鳴らないXiphaを片手に、膝を抱えて時計を睨み付ける。
長針が頂点をまもなく指し、0時を迎える。四角い空には月が登り、今日という日が黎(くら)く終わりを告げようとしている。
自分から連絡をすれば良いとは分かっている。けれども、彼からを期待してしまうのは我儘だろうか。
もう寝よう。そんな風に思った時だった。
突然Xiphaが鳴りだし、期待と不安が押し寄せる。
彼でなかったらと、恐る恐る確認する。
『よ、アニエス。悪いな、こんな時間に』
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