プシュケー指輪を嵌めたい夜もある。
終電一本前の電車に乗って自宅に帰ってきた独歩はリビングのキャビネット一番上の段、そっと仕舞ってあるリングケースをかぱと開けて自分の分を左手の薬指に嵌めた。するとなんだかスッキリし、ケースを元の場所に戻した。
そのまま上機嫌で、ダイニングテーブルに置かれたメモを読み、その指示通りに肉じゃがを電子レンジで温め、味噌汁が入った小鍋を火に掛けた。
夕飯を温めている間、独歩はジッと小さな石が嵌め込まれた指輪を眺めていた。シンプルな見た目な割にそこそこ良いお値段のもので、しっかり話し合って割り勘で買った。オンラインショップ経由だったため少し不安だったが、届いてお互いの指に嵌めてみるとサイズピッタリで嬉しかった。
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