幸福論を蔑む足跡(冒頭) 白い山が平らになり、リビングのカーペットが見えてきた。
母さんのマグカップを割った罰として渡されたのは、取り込みたてのタオルの山。きっちり畳みきるよう命じられた俺は素直に頷き、広げた両腕より大きなそれを、せっせと四つ折りにしていった。
これさえやり切れば二葉を取り戻せる。
文句や言い訳を口にする時間すら惜しい。一秒でも早く二葉を迎えに行きたい。
その一心で手を動かしていく。
溺愛する双子の弟は、俺の邪魔になるからという理由で客間へ連れ去られてしまった。
基本的に聞き分けが良くて大人しい二葉だ、俺の邪魔などしないのに。
恐らく母さんは俺が二葉を連れて脱走すると考え、先手を打ったのだろう。
更にもう一つ。
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