真夜中の背徳◆
猫になった夢を見た。
夢の中でオレは黒猫になっていて、人間だった頃よりもぐんにゃりと柔らかくて軽くて少しばかり体温の高い身体を存分に伸ばしながら暖かな陽だまりの中でまどろんでいた。鉛筆の芯みたいに真っ黒な毛の上で光の粒がキラキラと跳ねて腹の向こう、後ろ足の影からオレの長い尻尾の先が覗いている。日の光に全身を包まれて気持ちよくうとうとしていたら、誰かがオレの顔の前にショッキングピンクの猫じゃらしを差し出して振ってきた。今は遊びたい気分では全然なかったけれど、それはきっとオレの大好きな誰かの手だって分かっていたからオレは額を優しくくすぐる猫じゃらしの先に丸めた手をゆっくりと伸ばしてやった。くすぐったい、くすぐったいから。分かってますよオレと遊びたいんですよね。仕方ないな、分かりましたからもうくすぐらないでください大好きな人。
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