謎D×ゾーン──君に頼みがある。
そう言って続けられた言葉に、彼はほんの僅か哀れむような表情をして、静かに頷いた。
窓から見える空は曇天で、差し込む仄暗い光は今が朝なのか夕なのか、時間の感覚を狂わせた。
彼は寝台の上にゆったりと横たわっている。
身につけた黒いライディングスーツの胸元は大きくはだけられているが、羞恥や情欲といった感情は見えず、むしろくつろいでいるように見えた。眠っているように、薄く瞼を閉ざしている。
私は彼の傍らに腰掛け、彼の首筋に触れさせていた手を、ゆっくりと胸元へと滑らせた。
掌全体をぴったりと肌に押しつけると、そこから微弱な電気信号を送り込む。刹那の後に、彼の身体を構成するありとあらゆる情報が、同じく電気信号となって掌に応ってくる。一瞬にして体中を駆け巡った刺激を、私は敢えて詳細に解読せずに味わった。幾度も繰り返しては、情報の奔流に身を任せる。
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