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    フジミヤ

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    フジミヤ

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    アークレ突入前に書いてたやつ ゾーン様にラスボスムーブを夢見てた頃

    謎D×ゾーン──君に頼みがある。
    そう言って続けられた言葉に、彼はほんの僅か哀れむような表情をして、静かに頷いた。


    窓から見える空は曇天で、差し込む仄暗い光は今が朝なのか夕なのか、時間の感覚を狂わせた。
    彼は寝台の上にゆったりと横たわっている。
    身につけた黒いライディングスーツの胸元は大きくはだけられているが、羞恥や情欲といった感情は見えず、むしろくつろいでいるように見えた。眠っているように、薄く瞼を閉ざしている。
    私は彼の傍らに腰掛け、彼の首筋に触れさせていた手を、ゆっくりと胸元へと滑らせた。
    掌全体をぴったりと肌に押しつけると、そこから微弱な電気信号を送り込む。刹那の後に、彼の身体を構成するありとあらゆる情報が、同じく電気信号となって掌に応ってくる。一瞬にして体中を駆け巡った刺激を、私は敢えて詳細に解読せずに味わった。幾度も繰り返しては、情報の奔流に身を任せる。
    「ブルーノはすごいな」
    ふと遊星が口を開く。
    彼を見遣ると、青い双眸と視線がかちあった。
    「触れるだけで相手の情報が分かるなんて、想像もつかない、不思議な能力だ」
    便利だな、と言って彼は小さく笑んだ。
    私は眼差しだけで相槌を打って、再び視線を落とした。私の能力が遥か未来の技術に基づいたものであることは、今はまだ話せない。
    「――っ」
    再び掌を滑らせた拍子に、遊星は顔を背けて僅かに身じろいだ。
    「! すまない、遊星」
    「いや、構わない……平気だ」
    すぐに落ち着いた声が返ってきた。顔は背けられたままだ。表情は前髪に隠れていて、見えない。
    私は暫し彼の表情を窺ってから、咄嗟に浮かせたままの掌を、慎重に彼の肌へと戻した。
    「それよりブルーノ」
    遊星が再び口を開く。

    「触れるだけで満足なのか?」

    私は弾かれたように顔を上げた。今の声は。
    瞠目して見つめる私の目の前で、遊星はゆっくりと顔をこちらに向けた。
    青い双眸。仄暗い室内のせいか、底のない夜の空のように深い。そして薄く笑んだ口許。遊星――ではない!
    「あなたは――!」
    瞬時によみがえる記憶。白い空間、低い声、逆さ吊りの――青い瞳。
    「どうした」
    身を離して硬直している私に、彼は笑んだまま問いかけた。意外にもその声は遊星自身のものだった。
    「私に触れたいのではなかったのか」
    「何故、あなたが」
    「おかしなことを言う。私は不動遊星。そうだろう?」
    「違う」
    思わず身を乗り出して反駁した。彼に否を称えたのは初めてのような気がする。
    「違う、遊星はあなたではない!」
    「否、不動遊星は私であり、私は不動遊星なのだ。そしてお前もそう思っているからこそ、遊星に触れたのだ」
    「違う、私は──!」
    ふと彼は、口許の笑みはそのままに、慈しむように眸を細めた。遊星がそうするように。
    「可哀い従僕(しもべ)よ、お前は何を恐れているのだ? 私はお前に何も禁じてはいない。お前が私に触れたいと望むなら、その通りにすればよいのだ」
    「私、は――」
    「遊星は何と言った?」
    自らを不動遊星だと名乗っておきながら、他人事のように彼が問う。
    「お前が遊星に触れたいと言ったとき、彼は何と言った?」
    「彼は、遊星は――ああ」
    頭の中によみがえる、彼の声。真摯な響きの――

    ――分かった。俺がブルーノに出来ることなら、何でも――

    私は目の前に横たわる青年を見た。
    彼は相変わらず薄く微笑んでいる。その笑みが彼のものなのか、遊星のものなのか、私にはわからなかった。わかりたくはなかった。
    引き寄せられるように、彼に顔を近づける。それに合わせて、禍々しい青の眸が、ゆっくりと閉じられた。かさついた感触が、唇をひっかく。ささくれて薄くなった彼の唇を破らないよう、丁寧に唾液で湿らせては柔く食んだ。
    すり、と首の後ろを指先でくすぐられる。襟足の毛が逆立つ感覚に、とっさに身を起こした。首の後ろに片腕を回したまま、彼は私を見て小さく口を開く。一言も発せられない代わりに、ちらと舌が動いた。今すぐに食らいついて、その洞を自分の舌で満たしたいと衝動と、彼の意図のままに動かされたくないという思考がせめぎ合う。
    「ブルーノ」
    均衡が大きく揺らぐ。遊星の声で、彼が誘う。衝動の淵で必死に留まる私を、彼はせせら笑った。
    「……ブルーノ」
    首に絡んだ腕が離れる。代わりに、肘をついて身を起こした彼の顔が間近に迫る。制止の声を発する間もなく、彼の舌が触れて、唇の隙間をなぞる。彼から与えられるものを拒む術など、私にはなかった。
    迎え入れた彼の舌が、上顎の裏をざらざらと撫でる。首裏をくすぐられたときと同じ痺れが、喉の奥から後頭部へと広がっていく。
    「──っ」
    性感を拾いやすい部位を執拗に舐る彼の舌を、自分の舌で引きはがす。絡みついてきたのを見計らって、音を立てて吸い上げた。
    「ん──」
    口内にあふれる唾液を嚥下して、顔を離す。追ってくる唇をかわすと、彼の肘を掴んで引き寄せた。支えを失って、彼の身体はあっけなく寝台へと倒れ込む。追うように覆いかぶさり、両肩を掴んで縫い留める。わずかに眉根を寄せていた彼が、そのままの表情で口許に笑みを刷く。恐怖に近い衝動で、その口許に食らいついた。これ以上、遊星の声で、姿で、劣情の底を探られたくはなかった。
    抵抗もせず私を受け入れた口内を、仕返しのように蹂躙する。鼻で呼吸を継ぎながら、上顎の裏を、舌の裏側を、並んだ歯の一つ一つを舐る。乾燥した唇に吸い付き、柔く歯をたてる。こくり、と喉を鳴らして、彼が混ざりあった唾液を嚥下する。彼の喉仏が小さく上下するさまが脳裏に浮かぶ。確かめるように、首筋へと唇を這わせた。歯を立てようとして、そこが普段から晒されている部位だと思い至る。吸い付くことも封じられ、もどかしい思いで、鼻先や唇で首筋を何度も擦り上げた。彼はくすぐったそうに身を捩り、密やかに笑うように、鼻から短く息を吐いた。乾いた肌を吐息で湿らせながら、ライディングスーツのファスナーを腰まで引き下げる。暴いた胸元に吸い付きながら、左手で服の上から彼の股間に触れた。いっそ何も感じないでいてくれればいいのに、すでに彼の身体は快楽に反応していた。服の上から形を確かめるように触れていると、彼は息を詰めて腰を揺らした。普段の彼が決して見せることのない、性感を示す仕草に、思考の苦々しさを裏切って、身体は熱くなった。
    「ブルーノ」
    追い打ちをかけるように、頼るときの声で彼が呼ぶ。何をしてくれと言われなくても、その意を汲んで何でもしたくなる、あの声で。
    咄嗟に身を離した私の目の前で、彼はゆっくりと身体を起こした。はだけたライティングスーツを肩から落とし、ベルトを引き抜き、下着ごと下衣を脱ぎ捨てる。ためらいなく裸になった彼はベッドサイドに移動すると、チェストの引き出しから何かを取り出して、こちらに放り投げた。見た目よりも重さのある衝撃に、受けた左掌を見る。半透明のボトルの中を、粘度の高い液体が流れる。潤滑剤だった。
    「そんな表情をするな」
    デュエルで相手を嬲るときのような表情で、彼が笑う。
    「オレだって、そういう事くらいするさ」
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