二〇〇七年
その日は随分と穏やかな日だったように思える。
関東地方でも寒さが一段と厳しかった冬を超え、段々と温かくなりかけた早春のことだった。
毎日のように聞こえていた賑わいの音とそれに混じる喧噪の音はここ数日の春雨にかき消され大人しく落ち着いていた。
本家からの緊急招集で開かれた幹部会。突如開かれることとなったこの会合に顔を突き合せたメンツはほんの少数である。急遽連絡が繋がり動ける幹部組員が少なかったということもある。そして会長の不在。その穴埋めを就任して間もない本家若頭である柏木が担う事となった。
元々本家での仕事があったため赴くことは都合の悪い話ではなかったのだがこの土砂降りの雨だ。車で向かうとはいえこれだけ降られては気が滅入る。頭の隅でどこか憂鬱と嘆く自分がいた。
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