『朧(おぼろ)』 はあはあと息もまだ整わぬまま、ヘッドボードのティッシュを乱雑に抜き取って幻太郎の腹を拭う。脇腹まで流れ落ちた分も優しく拭き取ってやった。
それからようやく幻太郎の身体から出ていく。本当は名残惜しいけれど。抜くときに幻太郎がん、と小さく呻いて身体を震わせたので、愛おしくなってももの内側に一つキスを落とした。ゴムを外し、ティッシュにくるんでゴミ箱に投げ入れ、自分のモノもさっと拭く。どうせ後でシャワーを浴びるので、始末はそこそこで構わない。
ベッドへと倒れ込み、一二三が自身の後始末をしている間に気だるそうに寝返りを打った幻太郎の背中に抱き着く。額を押し付けた幻太郎の肩は少し冷やりとしていて、火照った身体に心地良かった。かいた汗がもう冷え始めているのかもしれない。風邪を引いてはいけないと、一二三は掛け布団を引き上げて幻太郎の身体を覆ってやった。幻太郎は疲れ切っているのか、向こうを向いたまま何も言わず、背中だけで一二三の行動を受け入れている。
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