付き合ってない1・2一
左方から「わあ」と声がしたので俺たちは互いに顔を離した。
見ると物吉貞宗が、戸襖に半ば隠れこちらを覗き込むような格好でいた。お取込中でしたね、すみませんと居心地悪そうに言うので、俺も兄者も首を左右に振る。
「何かあった?」
「いえ、午後の件で膝丸さまに……。あっお昼休み終わってからでも」
「いや構わん、もう戻るつもりだった。兄者、また夕に」
微笑む兄に手を振って、自室を後にする。
物吉は執務室までの道すがら、急ぎ必要になった資料の概要とスケジュールについて話した。肯いて、わざわざ三の丸まで伝えに来てくれた礼を言うと、組み合わせた手をもじもじさせている。
「さっきはその……お邪魔してすみません。僕、お二方がそういう関係だと知らなくて」
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