「ふう…依頼完了、かな?」
冷たいコンクリートの上、静かに燃える炎を見つめながら、シュウは一息ついた。
今日の依頼は至ってシンプルで、3階建てアパートの管理人から、屋上から変な物音がするため音の原因を調査してほしいとのことだった。
別に何か事件が起きたわけではないのだが、住民が物音を気味悪がって早々に引っ越してしまうという。話を聞く限りは、鳥か猫か、もしくは何か“いた”としても現状は特に害はないモノだろう。
深夜、住民達が寝静まり、静寂に包まれたアパートの階段をゆっくりと登る。屋上に着くと、まず目についたのは灰色のモヤだった。それは、まるで泳ぐようにゆらゆらと動いている。時折、手摺や放置された空き缶にぶつかり音を立てる。何をするわけでもなく、ただただそれは屋上を彷徨い続けていた。見たところ、あれが奇妙な音の原因に間違いなさそうだ。
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