ハインライン、モルゲンレーテへ吶喊す玄関から物音を立ててこちらにやって来る気配がある。これが幽霊や物盗りでないなら、他に可能性はひとつしかない。
「今はプラントにいません、新造艦の設計で今日からオーブに……」
「こっちが何時だと思ってるんですか?迷惑です」
「だから、そういうのは兄さんに全部任せてますから。僕は……」
「会いません絶対に。時間の無駄だ」
「いい加減に諦めて下さい!」
途切れ途切れに聞こえてくる話し声。誰かと通話しているらしいそれは酷く苛立たしげだ。
やがてぼんやりと光る端末に照らされて、アルバート・ハインラインの端正な顔が覗いた。次の瞬間には苦々しげに歪み、チッ、という舌打ちとともに端末をひと睨みし顔を離した。寝室に暗闇が戻ってくる。
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